しきたんの自由なブログ

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世界は終わらない(ノバラ座レポ)

小説家・エッセイストの嶽本野ばら先生の期間限定ギャラリー、ノバラ座(NOVALAZA)で開かれたイベントへお邪魔してきました。それはそれは、可愛くて、優しくて、楽しくて、あたたかい場でした。この記事では、前半を一連のレポート、後半に私の徒然文章を書きました。(8000字...汗)

 野ばら先生の略歴:フリーペーパーのライターとして寄稿していたエッセイで人気に火がつきエッセイ集を出版、からの小説処女作が大ヒット、その他いっぱい小説があります、乙女のカリスマとしてロリータファッション界を牽引、『下妻物語』も大ヒットで映画化されたり、その後大麻取締法違反や薬物取り締まり法違反で逮捕されたりもする、昨年9月に復帰作のエッセイ集『落花生』を出版。詳しくはwikiをご参照あれ。

 

京都に到着。京都って、盆地だからかちらほら漏れ聞こえてくる京都弁からか、やっぱり東京と空気が違う感じで異国感を感じます。 2時間以上の余裕を持って新幹線のチケットをとったのですが、ちょうどよかった。これ以上遅かったら遅刻した可能性すらありました。

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なんとかゴールを確認し、第一任務完遂しました。

澁澤没後30年記念 ノバラ座

会場は、賑やかな商店街から1本路地を入ったところのライト商会さん。カフェとギャラリーと骨董屋さんをひとつの建物に詰め込んでいるらしき不思議な場所。

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 1階のカフェはたぶん席に着けば心地よいのだろうと思われる薄暗さ。一度座ったらしばらく抜け出せなくなりそうです。 (席で珈琲を頂く時間は作れず、立ったまま撮影は憚られる雰囲気だったので写真はありません。)

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こちらの本を片手に東京のカフェー(名曲喫茶)を訪ねた時の心持ちになりました。異世界に足を踏み入れるわくわく感がたまりません。

カフェー小品集 (小学館文庫)

カフェー小品集 (小学館文庫)

 

   

 さてNOVALAZAの開かれている2階へ続く階段を登ると... とびきり豪華な薔薇のスタンド花!

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 今回のイベントは澁澤没後30年記念。書籍『極楽鳥とカタツムリ』(澁澤龍彦著・解説:嶽本野ばら)を中心に、貝殻や鉱物やボタニカルスペシメント(押し花)等の展示品もすべて澁澤氏にまつわるもの。後述する演劇指導の脚本も、澁澤氏との関係が濃い作品が用いられていました。 

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 今回のギャラリーは6日間通しの”インスタレーションと雑貨の間”な作品や書籍の展示&販売。野ばら先生が作品製作をしながらも販売、ラッピングまで全部担当されています。もちろん書籍購入者さんへのサイン等も。

Twitterから拝借させていただきました) 

極楽鳥とカタツムリ (河出文庫)

極楽鳥とカタツムリ (河出文庫)

 

  

嶽本野ばらによるトークショー&演劇指導

という、あまり聞いた事のないタイプのイベントがラスト2日間連続で催され、私は最終日にお邪魔してきました。

これが、すごかった。会場にはおばけ屋敷みたいなBGM。ラジオのノイズ、猫や正体不明の獣の声、風の音、赤ちゃんの鳴き声... 会場には私のような単独参加者も、知り合い同士のような人たちもいて、でも奇妙なBGMが適度なスパイスに聞こえるくらいに和やかムードでした。

長方形の会場の壁沿い、ゆるい円状に配置されたさまざまなアンティーク椅子が30名弱の参加者で徐々に埋まり、ほぼオンタイムで始まりました。 あれ、いつ始まったんだっけ、という自然な始まり方で驚きです。 

ゆるゆるトークが始まって、からの、出席をとりました。(※このイベントは演劇の先生と生徒の関係性の設定です)参加者全員に暗号的な番号が振られていて、それで呼ばれます。何名か、欠席の方がいらっしゃいました。

 以下に、トークショーでメモできた部分を書き付けてみます。(正確な記録ではありません。イメージとして読んでください)

 

会えるまで続けたい

そう、サイン会とかもだいたい1〜2割は欠席になります。毎日指折楽しみにしていて、何話そうかな何着ようかなって。でも楽しみにしすぎて、当日これなくなっちゃう.... そういう方もいます。僕の本読んでくれる人が心が健康なわけもなく。(笑)そういうことが出てしまって、でも、それでも良いと思うのです。そういうことも含めてね。次こそは、と思ってくれる人がいる限りはこういう場所なりなんらかのものを用意できるように。会えるまで続けたいな、と思うのです。

 

最後はお見送りしてね♡

今日来た人のことは、単に来ただけとは思わないよ。というか、僕はそのようには扱わない(笑)みんなも主催、参加者、スタッフなんですよ。搬入とか展示は全部自分でやったけどね、最後はみんなで片付けて、タクシーまで運んで(野ばら先生を)お見送りです。(笑)いつもサイン会とかでも最後数名お見送りしてくれる方がいるんだけど、その数名の存在に甘えるのです。今日は最後までやってくれた人にはスタッフ特典があるかもしれません。今日のためだけに買った備品を持ち帰れたりする...かもしれません。 

 

来てくれる人と顔を合わせて話をしたい

みんな、WIXってわかる?あれ、全然カンタンじゃないよ!(笑)たしかに無料で始められるけど、申し込みフォームつけたりいろいろやりたいってなると、結局お金払わなきゃならない。(ノバラ座は野ばら先生がお一人でサイト作成まで担当されています)

 

youtu.be

 でもね、来てくれる予定の人が突然来れなくなっちゃったりとかも、今まで(出版社が開催する)サイン会とかではあとでお手紙で知ったり次のサイン会で知ったけど、今回はリアルタイムに知ることができて。

今回は全部で70名くらいで、参加者一人一人からの個別の日程変更の相談とかいろいろとすごく大変だったけど、たぶん100名くらいなら、できると思う。一人でさばけないほどになったら組織に頼らざるを得ないけど、今はそういうのを含めて楽しいから。

作家がそういうことすると距離が近くなりすぎて価値が低くなって商売にならなくなっちゃうよ、みたいなことを言う人も多いけど。やっぱり、来てくれる人と顔を合わせて話をしたりしたいなって思うから。

そもそも、僕はもともと徐々に賛同者が増えたわけで。本が売れたのもフリーペーパーの単行本化だったから、読んでくれてる人がいたから、だから売れたんだし。青山ブックセンターの書店員の人たちが店長の言うこと聞かずに平積みしたりね。(笑)そういうやり方の人がいてもいいし。そうじゃないと、なんか、つまらないしね。

100万部とか、ムリだよ!(笑)みんなが1万部ずつ買えばいいけどね。(会場爆笑)で、親戚一同とかに配ってもらうとか。そんなこと言ってるから、嶽本野ばらとその周辺は宗教みたいとか言われるけど、それはそれで、いい。たしかにみんなはお客さん。読者。受け手。でも、スタッフでもあるという考え方をどうしても僕は捨てきれない。

 

 僕はパソコンみたいなもの

”僕の文章を読んで救われました” とか言ってくれるんだけどね。仮にまあ救ったとしよう。仮に救ったとして、その人が救われることで僕は救われているわけです。

それから、”野ばらちゃんのおかげで綺麗なものを綺麗だと思えるようになりました”とか言うけどね。ほんとは僕は関係ないわけ。単なるきっかけにすぎない、というか、綺麗なものを綺麗だと思えるようになったのは、その人自身のことなの。 

例えば、このボタニカルスペシメント。これを綺麗だと思ったとして、綺麗と思ったのはその人。(モノが綺麗だから綺麗だと思ったということではなくて)あくまでその人"が"そう思ったの。僕は、機械のような、パソコンみたいなもの。僕の文章は入力した人(読者)の文章なの。だから、少しでも良いOS、良いバージョンになっていけたらそれでいいなって思います。

 

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 特に参加者が質問したり話題が決まっていたりすることもないシンプルな形式、ゆっくりトーンで気さくに会場に向けてお話される姿にリラックス感が深まり、聞き惚れておりました...♡ こんなにフランクなカリスマ、いないと思います。

 

劇の練習 (戯曲『鱗姫』より)

休み時間を挟み、第二部はいよいよ劇の練習。どきどき。練習に参加したい人は内側に、見ていたい人はその外側に座ります。

私は戻るのがギリギリだった関係でうっかり内側に入りそびれ...残念。今日は見学していようかなと思ったものの、やっぱり読んでみたい!参加したい! ”この前野ばらちゃんが私の文章を読んでくれて、今回は私が野ばらちゃん文章を声にだして読むのだ” と決意しまして「あの、私も入って読んでも良いですか」と挙手、近くの方に無理やり場所を空けてもらって台本読みの輪に入りました。 実際の戯曲を一人一人、自分のパートを読んでいきます。

 

「読む調子を前の人に引きずられなくていいよ。ペースも前の人と同じ速さでやらなくていいし。自分の解釈なのが、良い感じだからね。たとえうまく読めなくても、それはそれで萌えです」と野ばら先生。その一言で会場は和みました。(笑)

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(正面から撮影する勇気が乏しく、雰囲気写真ばかりとなってしまいました)

 

 15名から20名くらいの輪で、数名演劇や声優等の活動経験をお持ちの方がいらっしゃり、たしかにこれは引きずられたり変に比べてしまったり、してしまっても無理はない。私は読み仮名を振っていなかった後半部分に当たってしまい、途中なんどか読み方教えてもらいながら、ド素人ながら自分なりに演技(!)してみました。終了後、参加者の方に良かったよと言ってもらい嬉しかったです。みなさんとても上手で、個性的で、とにかく本気で私たちは読みました。なんとなく音読してみた、みたいな人は一人もいらっしゃらず。初対面のメンバー同志だったのに、私たちすごかったですね!と言い合いたい。ファン同士で作品の話ををするのもいいけれども、こうやって思い切って自分たちの声を使って演技する(読む)のってスペシャルな体験でした。ますます作品を深く味わえるし、かつお互いの距離が近くなったようで。野ばら先生ご自身の、ト書き&セリフ読みもいわずもがな素晴らしかったです...(朗読会やってほしい、という声も。。私もそう思います♡) 途中、簡単な発声練習や歌を歌ったりする部分もあり、先生の号令と指揮でみんなで一緒に歌ったのも楽しかった....!

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鱗姫 (小学館文庫)

鱗姫 (小学館文庫)

 

 

 楽しい時間はあっという間で、イベントは終了。サイン&物品購入(という名の先生と話せたり写真とってもらえたりする)時間へ突入。サインの列に並ぶ人、展示品を眺める人、おしゃべりに興じる人、とても賑やかな場になりました。私もその一人となり、野ばら先生や参加者のみなさんと幸せな時間を過ごさせていただきました。 

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これも載せちゃいます。服の色とか首から下げてるあたり似てて嬉しい♡(野ばら先生の首から下がっているのは貝殻を保存袋に入れ、麻ひもを通したもの。お茶目です!私のは私物のアンモナイト指輪。チープなキッチュさが売りです。)

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 撤収作業まで私は居残ることができず残念ながら途中早退しましたが、撤収時も大変楽しい時間になったようでした。(備品をもらえたり、先生のグラビア撮影会が開かれたり!)

 

 (Twitterから拝借させていただきました)

 

世界は終わらない

野ばら先生の小説に『世界の終わりという名の雑貨店』という素敵なタイトルの作品があります。今回まさに雑貨店なイベントだったので、(上記のツイートにも書かれていますが)リアル”世界の終わりという名の雑貨店”だぁ〜!と、連想しないファンも多かったのではと思います。私もその一人でした。

....が、現実の「ノバラ座」で強く感じたことは、なんだ世界はぜんぜん終わらないじゃん、終わるどころかここからどんどん始まっていくじゃんってことでした。

野ばら先生は「僕の読者は基本的に心が健康なはずはない」なんて断言していて、たしかにいわゆるメンタルヘルス的に不調を抱えている方も少なくないようです。私は薬こそ服用していませんが、おそらく人並み以上に歪みつつ育ち現在はトラウマ治療で多分症状が軽くなった人間、自意識過剰で人との関係を築くのが苦手なのはまだまだ健在です。(簡単に言うと、一種のコミュ障かな...)

心が健康でない人、普通じゃないと揶揄されるような人間に、野ばら先生はとても優しい。どんな歪みがあってもその歪みを愛する、とおっしゃる。好きなもの、趣味嗜好、どんなに他人が否定しようと好きなものは好き、やりたいことはやりたい、それで良いのだ、それこそが乙女なのだからと旗をふる。そのどこまでも強くて優しい姿勢がそういった気概のある方を引き寄せているからか、とても過ごしやすい場所になっていました。一人でいても初めての方に話しかけても楽しい、居やすい、居てもいいんだと思えて自然体で居られる。そんな雰囲気。健康って何さ、普通って何よ、って感じです。

ノバラ座では、欲しい人には役割をあげるよ、というシステムがありました。お手伝いしたい!!と申し出た勇気ある参加者さんが”班長さん”となり”副班長さん”や飼育係さんなど、いらっしゃいました。(私は、今回申し出る勇気がなく。。。)どんどん参加していいんだよ、みんなで楽しもうよ、というメッセージだったのだと今思い返すと感じます。

演劇指導というテーマもとても斬新でした。冷静に考えると結構参加ハードル高いです。初対面同士で、しかも大好きな作家先生の前で演技するってかなりヤバい。(私、カラオケに友達と行って歌うって結構恥ずかしくて苦手な部類の行動なんですけど、それに近いものがある気がする...。)でも、やってみると一体感が生まれ、何かはじまった感がありました。 

とはいえ世界のはじまりの雑貨店、だとゴロも悪いしなんだか明るすぎて居づらそうなので、名前としては却下ですね。(笑)

 

相互扶助の秘密結社

詳細に書くと秘密結社ではなくなってしまうので書きませんが、大量の薔薇を詰め込んだスタンド花の送り主についてです。(お贈りされた方が実際どなたか私もまだ存じ上げないのですが、団体からということで記名されています)野ばら先生をお慕いする者の地下ネットワークで、私は遠巻きに見ていたのですが、イベント終了後に思いきって中に入ってみることにしました。

そしたら。ノバラ座がまだ続いているかのように、賑やかで楽しい場所で驚きました。野ばら本や野ばら先生が好きという共通項で集いし乙女(一部男子)の楽園のようです。普通じゃなくても歪んでいても気分が落ち込んでいてもOKという優しい雰囲気で素敵です。振り返ると、私は前述の「班長さん」にノバラ座前にTwitterで話してもらったり、イベント中も、後も、気を回していただき、優しく明るく接してもらったおかげでこの秘密結社でも楽しく過ごせているかんじです。ありがとうございます^^

今回野ばら先生が受けとった手紙の内容として、この秘密結社が心の励みになりますという内容も多かったと聞きます。トークショーの中で、「席は移動したり交換したりしましょう、相互扶助です、プチ左翼です、違うか(笑)」なんていうお話もありましたが、この場所こそまさにゆるい相互扶助。私も、素敵な方々に出会えてとても嬉しいです。

 

ノバラ座という現象

ノバラ座、また開催される可能性が出てきているようです。サイトも閉鎖予定だったけれども公式サイトとして継続されるかも、とか。イベントは終了しましたが、もはやファンで企画して私も運営協力したい気持ちでいっぱいです。他のファンの方からもそんな声が聞かれます、本当に何かはじまっちゃいそうです。

私、下世話だと思いながらも、つい今回のコスト・収入をざっくり計算してみました。(雑貨の部分は詳細不明)たぶん赤にはならず利益も少しは出ていると思われますが、でも作家先生が出版社の後援なしに手売りで本や品物を販売するって今までのことを考えると本当スゴイことです。でもむしろマスメディアよりもソーシャルメディアな時流にあったやり方、とも思います。京都以外、たとえば東京や福岡とかでやったら会場費に加え往復交通費と連日であれば宿泊費、それに加えて利益を出したいところなので色々と工夫する必要が出てくるように思います。会場を借りる必要のないツアー形式であれば、とか、クラウドファンディングみたいに参加者が一定以上の確約が得られたら実施とか...。うーん。いやいやそんな計算、まったく必要ないのかもしれません(笑)変な妄想ごめんなさい。ともかく、本当ファンはスタッフです。尊敬する方と仲間と一緒に活動できるだけで楽しいのです。これからのノバラ座、楽しみです!

 

野ばらちゃん、素敵なイベントを本当にありがとうございました♡ イベントや地下ネットワークでお話させていただいたみなさん、ありがとうございます♡またいつかお会いできたら嬉しいです。

 

まだうまく消化しきれていなくてまとまらず、後半だいぶ冗長な長文になってしまいました(汗)。にもかかわらず最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました! 

  

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