しきたんの自由なブログ

思うことや感じることを、けっこう自由に書いてるブログ。

私に矜持をくれたひと。

人の一生でもっともデンジャラスな時期は、14歳から17歳に違いない。ここを駆け抜けられたなら、あとはなんとかなるでしょう。

 

この春、とあるサイン会に向かう機会があり、突然思い出しました。

 

私、もしや、昔サイン会というものに、行ったことがあるかもしれない... 

そのサインをしてくれた方は、今時珍しくステッキをついていて、抜群にオシャレで、優しくて...

当時の私の長々しく珍妙なペンネームを書いてくれて、そこは渋谷の青山ブックセンターで、長蛇の列をなしたファンの一部はロリータファッションで武装した私と同年代、15歳から18歳ごろの少女たち...(私は、当時女性性を拒否し自分を男性だと思いたいボーイッシュキッズだったので、きっとユニクロなんかを着ていたのではなかろうか)

それが、作家・嶽本野ばらさんとの一瞬の拝謁でした。

アウトローながら毅然とした態度(アウトローだから毅然としている、毅然としているからアウトロー、なのですが)の、登場人物たちの生き様の美しさ、それは作者のもつそれに必ず直結しているのだろうと思わせるもので、ご本人の美しさもあり尋常ではない神々しさを感じたことを覚えています。まばゆかった...!

  

そのフラッシュバックがあってから、偶然、野ばらちゃんトークイベントの存在を知り、今年の5月におよそ15歳ぶり、恐れ多くも15年ぶりにお会いしてきました。そのことはまた別途記録したいと思いますが、私が驚いたのはその際購入した『落花生』という真っ赤な想定のエッセイ集の1編、『ロリコン詩集ー過ぎ去りし時間の門番』です。

 

一部、引用させていただきます。

「貴方は、僕がいるから生きていられるのだというけれど、そのうちに忘れてしまいます。そんなことあるものかと息巻き、否定するでしょうが、多分、忘れてしまうのです」

そう。その通りだったのです。もちろん嶽本野ばらという存在は覚えていました。出版されるたびに本を読んでいたということも。でも、私に与えた影響を私は驚くほど、忘れ去っていました。行き倒れ寸前に無我夢中で食べた食糧のインパクトを、飢えがおさまったその人はどれだけ覚えているでしょうか。私は少女と呼ばれる年代特有の不安と葛藤の中で嶽本野ばら作品に引き寄せられ、バリバリと噛み砕いて自らの血肉に変え、なんとか生き延びたようにも思うのです。

その栄養素を一言でいうならば。矜持(きょうじ)という言葉に集約されます。矜持を持って強く生きることの尊さは、ロリータファッションと真逆のボーイッシュユニクロファッションだった私をも生かしてくれました。乙女のカリスマと称される野ばらちゃんの言う乙女とは、誰に何と言われても自分が良いと思ったものをつらぬく覚悟を持った存在のことを指します。孤独の海の底にいた私は、孤独で良いのだと背中を押され、歩き続けることができました。一人の乙女として、感謝しても仕切れないのです。

 

「世界の理(ことわり)にまだ参加してさえいないのに、世界に対して吐いていた貴方のその絶望の溜息で彫刻されたデッザンの狂った貴方という世界模型の意味不明の滑稽なデザインを、僕は最高傑作の貴方として賞賛します。」

そう。意味不明で滑稽で、それでも100%本気で絶望している。歪んだレンズでしか生きられない、しかしそれこそ特権であるような生々しい感覚がよみがえるようです。 

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落花生

落花生

 

今、過去読んでいた書籍たちと、その後私の知らぬ間に出版された書籍を買い求めて読んでいますが、以前とはまた別の面白さも含めて、噛み締めています。昔一方的に好きだった人を、勝手に忘れて、もう一度一方的に好きになるなんていう体験は初めてかもしれません。私の足らぬ表現力でも、書けたらレビューを書いてみたいです... 本当に面白いです。無理やり選ぶなら、これ。個人的一押しを貼っておきます。

破産 (小学館文庫)

破産 (小学館文庫)

 

 たまたまこの記事を読んでいる方の中にも、いらっしゃる気がしてなりません。そう言えば昔、読んでました、それもかなり愛読していましたという方が。そんな方へのお知らせをしたくてこの記事を書きました。

 

本日から約1週間ほど、素敵な期間限定ギャラリー(お店)が京都で開かれています。ご本人が企画、展示作品製作、参加者への連絡等、手がけられている、あたたかな企画です。っていうか、ファン垂涎です。。期間中ほぼ在廊され、書籍&作品販売、サイン等していただけるとか。7/29,30はトーク&演劇指導という異色のイベントがあり、私は30日に伺う予定。今から毎日楽しみでなりません。。!(値段もピン〜キリまで、いろいろなものを置いているそうです!)

 

 

NOVALA座(期間限定ギャラリー@京都 7/25-7/30)

https://www.novalaza.com/

 

わくわく✨

 

 

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