しきたんの自由なブログ

思うことや感じることを、けっこう自由に書いてるブログ。

『502』

「ねぇなんでこんな時間にお皿洗ってるの?私もう寝たいんだけど」 

「だって。今日一回もお皿洗ってなかったし、明日忙しくて無理だから。」
「だからってちょっと普通じゃないよ、もう1時すぎてるよ、みっち、明日6時起きなんだよね?」
「それはそうだけど、でも」

たまにこうなる。私が彼女のためにやっているのに怒られる。しかもタチの悪いことに、本当はやりたくないのに我慢してやってるだけ。つくづく厄介な人間だと思う、我ながら。

「・・・で、でた。・・・いる、あっちの壁」

ん?
 
ゆーちゃんの指差す先を見ると、一目瞭然。・・・・が、来訪されたようであった。名を呼ぶのも恐ろしい。畏怖。これが畏怖か。5cmは超えている。原因は分かっている。ピザだ。隣の部屋ではしょっちゅうピザが注文されていることも、相当に不潔なことも私達は把握している。それから、雨だ。雨の日は出やすいということを今更ながら思い出す。今日この部屋で初めてドミノピザに注文を入れたのだが、まさかピザ1枚でこんな事態になろうとは。土砂降りで外に出たくなかったからピザを注文した、たったそれだけのことが許されないなんて。神様を責めたい、しかし責めても何も出てこない、いやそんな場合ではない。

「私コンビニでゴキジェット買ってくる!みっち、あいつ見てて!見失わないでね!!」

ぜったいに見失うものか。あ、ちょっと飛んだ。ひい。こっちくるなぁ!…あ、10cm移動しただけだった。よかった。あ〜ん、ゆーちゃん、早く帰ってきて〜〜〜!

「ゴキジェット!買ってきた!はい!」
マスクをし、もてる精神力をかき集めた。大型には8秒噴射すべしとある。3秒で奴は噴射軌道からずれ、もがいた。絶命するまで何度も包丁を振るう怯えた殺人犯の気持ちの10分の1くらい分かってしまったかもしれない。やるしかないやるしかないやるしかない….

奴は完璧に動かなくなった。私の方が死ぬかと思った。頭酸欠状態、くらくらする。やっぱり私は、此奴は嫌い。殺すのも嫌い。ゆーちゃんは好きだけど、この生活リズムも狭い家も、不潔な家の隣ももうたくさん。もう我慢できない。

「ゆーちゃん、引っ越そう。で、食洗機も買おうと思う。」
「だね。よく言った!」
 
 

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7月の800字小説(2作目) テーマ:奴が来る夜 
 
※部員さんからいただいたアドバイスを一部反映しつつ、一部加筆しました。