しきたんの自由なブログ

思うことや感じることを、けっこう自由に書いてるブログ。

『チンドン猫太郎』

電話だ。
スピーカーの音量を下げる。
妻からだった。
同窓会で遅くなるから友人宅に泊まるという。
もう21時だ。
持ち帰りの仕事になんとか片をつけようと、没頭しすぎた。

 
寝室に、ホワイトエール1缶とガーリックトースト丸ごと1本持ち込み、窓を開け、クーラーを消す。静かだ。どこかで風鈴が揺れている。

 


振り返ると、猫が3匹。こちらをじっと見つめていた。網戸は閉めていたはずだが… いや、それよりも。太鼓や旗を背負い、三味線を持っている者までいる。二足歩行で近づいてきた。

もしかすると話せるのかもしれない。猫と話すのは私の長年の夢と言ってもいい。いったいあいつは何を考えていたのか…

「こんばんは。夜分遅くに失礼します。チンドン猫太郎、猫二郎、猫三郎と申します。今、お邪魔してよろしかったでしょうか」
意外にも声は低かった。外見からはわからないが、おじさん猫なのだろうか。こんばんにゃ、って、言わないんだな。

「もちろん、いいですよ」
「ありがとうございます。それでは、1曲お聞きください。見間違えますよ。」

猫たちは姿勢を整え直し、一列になり、一斉にお辞儀。寝室を練り歩き始める。真っ黒色のリーダー格らしき猫が太鼓を叩き、茶トラとミケも、首をふりふり後に続く。

チンチン、ドンドン、チンドンドン、にゃァ
チンチン、ドドドン、チンドンドン、にゃッ

あれ、この声… 

 

 


「おはよう。缶とパンのゴミ、捨てといたから。クロスケがいたらこんな食べ散らかしたまま寝るなんて絶対できなかったのにね、もう。あと2時間で出るからね、早く支度しなきゃ。」

妻が帰ってきていた。
そうだ、今日はお盆で実家に帰るのだった。

あのいたずら猫。チンドン猫太郎、じゃないだろう。クロスケだろう。何も言わずに姿を消して。いつの間にチンドン屋の太鼓担当になったのだ。うん。見違えたよ。また遊びにおいで。お湯でふやかした煮干しに、欲しけりゃビールもつけてやるから。

 

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7月の800字小説(1作目) テーマ:奴が来る夜 
 
(6月は書き上げられず未提出でした)