表現と浄化 東京ゲゲゲイ歌劇団
一昨日、東京ゲゲゲイの単独公演「東京ゲゲゲイ歌劇団」を観て、何度も涙を流し、何度も笑って、全身に衝撃を受け、放心状態で帰り、今日やっと感想を書けそうだ。兎にも角にも、ものすごいものを見てしまった。
ツイッターで #東京ゲゲゲイ歌劇団 のハッシュタグを検索して見てみると、見にいって感動したという感想の中でも「とにかくすごかった」「自分のボキャブラリーが足りないのを嘆く」「なんて言ったらいいのかわからない」というようなツイートが多数目につく。まったく私も同感で、私に至っては感想をツイートすることもできなかった。
会場で購入した「東京ゲゲゲイ読本」の中の中村うさぎさんが書いている文章がとても印象深かった。(以下『』は読本より引用。)
『ダンサーはその頭の中にあるグルグル渦巻いたものを、言語にせず、ダンスすることで浄化していくみたいなところがあるかもです。整理せずに解消していくみたいな』(東京ゲゲゲイのリーダー、MIKEYさんの言葉として紹介されている)
これを聞いた中村うさぎさんは『そうか、これが芸術家というものなのだ』と衝撃を受けた、という一節だった。
これを読んで、私が受けた衝撃がなんだったのかぼんやり掴めてきた気がした。
一言で言うならば、私が観たものは「浄化」で、体験したものは「癒し」だったのではないかということだ。
同時に思い浮かぶのは、今私が読んでいる荻原規子さんの歴史ファンタジー小説『風神秘抄』の中に出てくる、という白拍子を踊る遊君、糸世(いとせ)のこと。
彼女が舞うと、蓮の花が空からひらひらと舞い落ち、天の扉がひらく、とう描写がある。彼女の舞を観た人それぞれに、奇跡を見るらしい。良い香りを感じた、という者もいる。舞を観終わった後は、ぼーっとしてしまうらしい。
つまりそれって、東京ゲゲゲイ歌劇団の歌と踊りを観た私の状態と同じじゃん!と思ったのだ。
糸世は巫女ではなく宴席で舞う芸人だが、一心に祈りながら舞う。その祈りが天の扉をひらいていく。天の扉とは、一人一人の心の扉とも言い換えられると思う。
東京ゲゲゲイのパフォーマンス、MIKEYさんの生歌がこんなにも魂に揺さぶりをかけてくるのは、もちろん構成の素晴らしさ、音の使い方、映像の使い方、といった技術的な力も多分にあるのだろうとは思いつつ、それでもその底には人間の祈りが流れているからなのかもしれない。
人前で歌うのは実は苦手なんだけど、自分と聴いてくれてる人の境界線がなくなって、自分の世界を歌ってるのか、聴いてくれてる人の世界を歌ってるのか、どっちかわからないような、自分がどんどん消えてくような不思議な感覚。
— 牧宗孝(MIKEY 東京ゲゲゲイ) (@tokyomikeyland) November 2, 2016
自分が感じてる苦しみや悲しみは、自分だけのものじゃなくて、誰もが感じてる感情なんだと、信じてるからかな。
— 牧宗孝(MIKEY 東京ゲゲゲイ) (@tokyomikeyland) November 2, 2016
私は蓮の花こそ見えはしなかったが、ホール全体に何かが充満していたこと、見えない何者かが体を通り過ぎていくのを感じていた。そんな瞬間が何度もあって、その度になぜだかわからない涙が勝手に流れていた。
表現とは文字通り「表す」こと。「現す」こと。内部にあるものを外に出すということ。人と人の内部は地下道のようにつながっているとうこと。 パワフルな表現は、見る者一人一人の中に押し込めた感情を取り出して浄化する、癒す力がたしかにある。
そんなことが本当にあるんだな、と思った。そして、そんなことを自分自信でもやってみたいと思った。
人に見せるというよりも、まずは自分で自分の内部を取り出して、言葉という意識的なものに引っ張り上げる前の生物に近いままで、体で浄化してみたい。私はこのブログで自分の体験や感情をなんやかんやと文字にしているが、体でもそれをやってみたい。それを強烈に感じた機会だった。
キテレツメンタルワールド
東京ゲゲゲイのキャッチフレーズのこの言葉は、キワモノな匂いを発しているものの、つまりは誰の中にもある心(メンタルワールド)のことなんじゃないか。心って本当はこんなにキテレツなんだぜ、って。
公演で東京ゲゲゲイのテーマ的に流れた「TG」は、個性を抑えている全ての人に力をあたえてくれる。ゲイといえばLGBTだけどまあ、それどころじゃない。
(個人的には、レディ・ガガの Born this way 以上の破壊力だった。。)
どこに明記されたわけでもないけど(「ゲゲゲイの鬼太郎」の影響か、ゲイの響きの影響か)「おれたち東京ゲゲゲイ」のフレーズには「異端で結構」という強いメッセージを感じる。
人の目を気にして「普通」「良い子」「常識人」でいる必要なんてない、このままでいい、これがいい、だっておれたち東京ゲゲゲイなんだから。そんなありのままの姿への人間賛歌に聞こえてならない。
ここまで書いても、今感じていることが言葉では追いつけない。追いつくはずもないし、追いつかなくてもいいや。
東京ゲゲゲイの皆さん、素晴らしい舞台を本当にありがとうございました!!!
明日の千秋楽まで心の中で応援しています。そしてこれからもずっと応援しています。
以下「TG」より引用
TG We r TG.
TOKYO れたち ゲゲゲイ
ようこそキテレツメンタルワールド
ゲゲってゲゲってゲゲまくり
TG We r TG.
TG We r TG.
東京東京東京ゲゲゲイ
果てしなき芸の道を
歩んでいくことを誓います
今回の公演音源サンプルはこちらから。歌が本当にすごく良いです。
フルバージョンはitunesで配信中!
ここからあとは、ファン的なつぶやき。。
諸々クソマジメに書いたけど(なにしろ衝撃がすごかったから。。)東京ゲゲゲイ歌劇団、ほんとーにめちゃめちゃ面白かった。。何度も声出して笑って、、ユーモアの散りばめ率やばいw 愛の散りばめ率もやばかった。メンバー全員のことをいろいろ知れて、ますます大好きになる公演。また行きたい。アンケートにも書いたけど、5000円じゃ安い。1万円でも普通に行きます。
ちなみに、私が東京ゲゲゲイを知ったのは実はつい1週間前のこと。Youtubeでたまたま出てきた動画がものすごくて、そのまま一気にはまりこみ、単独公演を知り、もちろん売り切れていて諦めていたところに、知り合いが単独公演のチケット譲り受けてくれるひとを募集していたという超棚ぼた。本当に何が起きたんだろうってくらいラッキーでした。。謎のフローというか引き寄せというか、とにかくついてる。
最初これ見てはまりこみました。
そしてこれを読みました。
アーティスト・インタビュー:牧 宗孝(MIKEY)(ダンサー、振付家、演出家/東京ゲゲゲイ) | Performing Arts Network Japan
とくにここが印象的。じゃあそのまま殺そうって決めるってすごいわ。
ストリート系はどちらかというと足ですけど、ゲゲゲイはやっぱり手なんだと思います。ストリートダンスを始めた頃、レッスンに行った時にある先生から、身体のエネルギーは循環していて足を踏んだことで連動して手が動く。君の場合は下半身が全部死んでるって言われて、じゃあそのまま殺そうって決めた(笑)
これも貼っちゃおう。日本エレキテル連合も大好きな私にとって、ミラクルなコラボレーション。
私も私の
果てしなき芸の道を歩んでいくことを誓います♡